第11章 破滅の鐘
「ですが、どうやって呪いを断ち切るのですか?
魔力の根が身体中に巡り、複雑です
断ち切る魔力回路を間違えれば、彼女は本当に死んでしまいます」
「わかってる
けど、俺の風の力ならわかると思う」
ヒルトの大剣は風と化し、完全に姿を目で捉えられなくなる
だがそれでも重さは変わらず、ヒルトは両手で持ちながら構え、更なる風と魔力を集める
「止まない銃撃でも、ほんの一瞬だけ弾を補充する隙ができる
その瞬間、俺が合図するからこの壁を消してほしい」
「わかりました
それまでは破壊されないようにします」
乱射が続き、リリースの狂った笑い声が空間に響く
「あっははは!
どうしたのよインドリーム!
隠れてないで、さっきみたいに大口叩きながら前に出てこればぁ!?」
発狂ともいえる状況でリリースは腰に手を回し、次の銃弾を補充しようと体勢をかえる
そして金属の弾切れ音が鳴り、ヒルトの合図と同時にユリエフは壁を消す
「風よ、退魔と化し、全てを見透せ!」
ヒルトの瞳は白銀に輝き、リリースの体の中に巡る数多の魔力回路を透視する
そして明らかに結び目のように拗れた箇所があり、そこからリリースではなく、別の闇の魔力が湧き出ていた
「そこか!」
大剣を真上に振りかざし、一気にリリースの頭上から落とす
「大いなる風よ!
対象となる者の邪念を、全て除き去れ、〈ウィンド・クロノトマトゥラー〉!」
「っ!?」
弾丸を補充する隙もなく、リリースはヒルトの大剣で一刀両断され、全身の力を無くす
目は虚ろになり、周辺に散らばる拳銃は塵となって姿を消していった
「一体、何をしたのですか?」
不思議そうに見つめるユリエフはヒルトへ視線をむける
「風族は一瞬だけ相手の魔力回路を見通す力を発動させれるんだ
俺はそれを使い、リリースの中に宿る呪いをインドリームの力で断ち切った
だからもう、人殺しを目的とするような使命に取りつかれることは無いと思う」
「リリースさんを救ったのですね
流石です、ヒルト君」
安心したように微笑み、ヒルトとユリエフはお互いが武器を収める
「ーーーこんなこと・・意味なんて、ないよ」
虚ろな目に涙を浮かせながら小さく呟き、座り込むリリース
「使命が・・あたしの中から消されたら
これからどうやって生きていけばいいの?
こんなの・・救いでも何でもないよ。」
