第11章 破滅の鐘
「魔族になり、そのままインドリームに浄化されて終われるなと思うな
あいつらは使命よりも個の命や夢を優先する
もし既に夫である存在と接触し、その夫がお前を救ってほしいと願い、ふたたび共に過ごしたいという夢を抱いていれば浄化する以外の方法で対峙するだろう」
「・・・」
「それが闇堕ちとして世界に留まることになるのか、または別の奇跡が生まれるかは検討もつかないがな」
「まるで、インドリームのことをよく知っているように語るのね」
「知っているさ。
あいつらは、俺が守るべき大切な友だからな」
「!」
ライアンは衝撃の事実に目を見開く
闇族として世界を蹂躙した存在が、どういう経緯があってか光の戦士達を友ということに。
相反する属性をもつ存在は性質上親密な関係にはなれない
それが魔術界の常識であり、世界でも通用することだ
光と闇が共に歩むことなどあり得ないと今の今まで思っていたが、自分が信じてきた常識を覆す現実に目が泳ぐ
「あなたが外の世界に戻る理由は、インドリームのもとへ行くためですか」
「あぁ、あいつらの旅を見届け、守り抜くと誓った
破滅の鐘の奇襲で今はここにいるが、長居をするつもりはない
この結界がつぶれれば閉じ込められていた死者の魂は消え、浄化されるために天界へ行く
おそらく魂を導くためにその分野の専門の天続がまっているだろうな」
空に亀裂が入りながら僅かな地震が結界内を襲う
「っ、もう結界が壊れるわね」
「そうだな」
クライヴは目をつむり、静かに両手の平を重ね、小さな闇のキューブを作り出す
片手の平に収まるほどのキューブは禍々しく、闇の瘴気を放っていることは死者のライアンでも魂の真髄に届くほどだった
「そのキューブは霊魂留め〈ソウル・コージング〉?
死者や悪霊の魂が浄化されないように留める移動型結界・・」
「そうだ。
昔、闇の神が俺の中に多くの悪霊や神獣の魂を入れる際に使用した結界だ
各神殿に封印されている悪霊や神獣を無理矢理解き放てば
監視している天族が嗅ぎ付けることになる
そうならないために隠密に持ち運ぶために作り出された結界・・それが霊魂留め〈ソウル・コージング〉。
ようするに、ただ霊を持ち運ぶための結界ということだ」
「その結界術を取得するため、多くの魔術師が探し求め、命を落としていったわ
そんな代物を簡単に作り上げてしまうのね」
