第11章 破滅の鐘
「人同士が圧力をかけたり、監視し合うのは間違っているわ
だから自警団長である夫に町の在り方を変えるよう諭した・・
けど、゙変えるべき時は今ではない゙
そう言ってすぐに動こうとはしなかった」
「だから町を出て旅をし、そして破滅の鐘に襲撃されたのか」
「えぇ・・私の行動が軽率だったのはわかるわ
けど、彼らは火族を母体とした集団であり、世界に戦火をまくことこそ正しいと掲げる狂信者達。
主に亜人という異能力を保有している彼らは命令には忠実に従い、例え己の命が犠牲になっていても目的達成のためなら投げ捨てることは厭わないわ」
「・・・・」
アークに追い詰められている巨人を見つめながら
クライヴは黙って話を聞いていた
ライアンを憐れむことも同情することもなく
ただ静かに、巨人のうねり声が止むのを待ち、ライアンから語られる真実を聞いている
「私があなたの呼びかけに応えたのはまだ浄化されるわけにはいかないから。
まだ浄化されるわけにはいかないのよ」
「やめておけ。」
静かに語るクライヴの口から放たれる言葉重く
決して冗談を混ぜているものではない
ライアンの未練には危険がついており、短時間ではあるがその魂を想っての言葉だった
「死者の魂は浄化され、天界を巡って次の命へ転生されるのが理だ。
だが、浄化されずに無理に留まり、生者と会うことは世界の理から外れる道を選ぶことになる
つまりはお前の魂は闇に触れ、汚され、魔族となる可能性もある・・・その覚悟はできているのか?」
「――――覚悟はできているわ
魔族になる前にあの人ともう一度会えるなら、心残すことはないの。」
「・・はぁ」
冷静に見つめていたクライヴはため息をおろし、めんどくさそうに肩をすくめる
「目的を達成できるなら、闇に堕ちることに対して何も厭わなかった・・そう、思っている時は俺にもあった」
「え」
「昔の話だがな。
闇に堕ちてからの記憶はほとんどないが、今こうしていられるのは俺を支えてくれた騎士がいてくれたことと
俺を友だと胸をはって言い、闇に堕ちかけても何度でも救ってくれた仲間がいたからだ。
そいつらが魔族と戦い、傷ついている時を見るとたまに頭の中でよぎる・・あの時、闇に堕ちなければこんな世界にはならなかったのだろう――――とな」
後悔、それはクライヴの中で渦巻く感情の大半を占めている
