第11章 破滅の鐘
輝きを失いながら闇と鮮血が広がる湖の中へ落ちていく
弓を射る腕を構築していた星々は朽ち果てながら石クズとなる
闇で染め上がる異空間の直中で体を浮かせ、沈みゆく巨体を虫けらのように睨む赤い瞳
「ぬっ・・ぐぅ」
星々で作り上げられた一体の巨人
表面は硬い星と漆黒の闇で覆い、いかなる攻撃も受け付けない強固な体は弱々しくよろけながら目前で浮かぶ一人の青年を睨む
「キサマ・・ただの闇堕ちではない、な」
巨人の声は男の声でとても重低音であり、異空間の中に響く
口を開けるだけで衝撃で湖の水面が揺れ、浮かぶ数多の死体が踊るように骸をぶつけ合う
「今更気づくとは、ここの結界も大したものではないな」
真っ黒な髪を掻き分け、クライヴは失望したように呟く
巨人の体が朽ちていくこと同時に
空を覆っていた闇夜は明け方へ変わっていく
異空間にあるはずもない太陽の光が差し込むのは、結界の力が弱まり外界への道が開けてきた証
「流石は我が主人ーーーー
この結界をこんなにも早く破壊なされるとは・・感服いたします」
深淵の青を写したような髪をなびかせ、右分けにしていた長い前髪を耳にかけ、赤い瞳を主人として慕う魔術師
「頭を上げろ、アーク
お前の助力があってこそだ」
クライヴは背後で跪く魔術師の名を呼び、その働きを褒めた
「勿体なき御言葉です」
「・・・さて、早速だがアーク
この巨人の仕組みを調べろ。
使える魔力を保有しているなら力の一部へ変換するが
もし結界と同時に消滅するようなら不要だ」
「かしこまりました」
クライヴの背後で一礼し、アークは瞬時に巨人の頭部の前へ姿を移動させて大杖を取り出す
「縛り上げ、その一滴たりとも魔力を逃がしませんよ」
二本の指で大杖の上部に装着された赤い宝石から魔力を取り出し
魔術文字を空中に描いていく
白く光る文字はすぐには消えず、一文になった瞬間に巨人の体へ付着していく
まるで蛇が獲物を仕留めるように文字は螺旋状に絡みつき、巨人の体に圧力をかけていった
「ぬっぐぅ・・ガァァ!」
「おっと、暴れない方が身のためですよ
この魔術は抵抗すればするほど力を強める
もっとも、私より魔力が上回っているなら関係ありませんがね」
アークの魔術が巨人の体の仕組みを調べ上げている中
クライヴは後方で控えていたライアンへ近づく
