第11章 破滅の鐘
白く汚れが目立つ壁と天井は丸く、吹き抜けとなった窓からは心地よい風と日差しが入ってくる
「先の場所とは大違いだな」
ジェイクは兵士に連れられて歩いてる中次第に心地よい風が運ぶ香りは人の血へと変わっていく
「こちらへ人を回してくれ!
傷口をおさえてほしい!」
「おい、そこのお前、手を貸してくれ!」
「医療班、優先はこの患者だ!」
「先生!
拒絶反応をおこして痙攣してます!」
兵士が一枚の鉄の扉を開けた瞬間
景色は有象無象の人で溢れた景色が広がる
白衣を着ていた者達は人の血がこびりつき、マスクをつけたまま
息を荒くしながら走っていく
先までの静寂が夢のように掻き消された光景
血と死臭が混ざった部屋の中の空気は濁っている
「ここは・・」
「先の騒動で被害を受け、巻き添えになった住人たちだ
医療班が総力を持って手当をしているが、間に合わない
ここにつれてきた」
「ーーーー」
血が滲んだ包帯を巻きながら苦痛を呟く者
肢体の一部を失い、気絶している者
傷は酷くないものの、傍で寝かされている者の手をとり、絶望する者
泣き叫ぶ者や気が触れ、狂言を吐く者
多くの人間が心と体に深い傷を負っている部屋へ呼ばれたのは
ジェイクにインドリームがしたことの被害の大きさを伝えるためではなかった
ただ現実をつきつけるだけでなく、自ら犯した罪を必死に償おうと懸命に治療をする1人の天族と青年の元へ案内するためだ
「ヒルト君、ここに包帯を!
私は次の患者を診て来ます!」
「わかった、ユリエフ」
手袋とエプロン、マスクを着用していてもその姿はとても目立つ
服などの見た目だけではない、ジェイクには見覚えのある身近な存在だったからこそ目についたのだ
「ヒルト、ユリエフ」
「ジェイク!
無事でよかった」
「あ、あぁ
それよりお前もユリエフも大丈夫なのか?
アランやイリヤ、ライセイは?」
マスクを外して近づくヒルトの表示はとても柔らかく
破滅の鐘と戦った時とは比べものにならない
「アランとイリヤは奥の部屋で寝かせてる
ライセイは二人について看病してくてくれてるんだ
俺とユリエフは動けるから、ここの人達の力になれればって思って
傷の手当てをしてたんだ
治癒能力がない俺にできることは少ないけどな」