第11章 破滅の鐘
「え?」
「その右手を光がある場所へかざしてみろ
奴らの根城まで先の炎が道標になる」
「光がある場所って・・・」
「日中の日の光でもいいし、夜のランタンや焚き火でもいい
とりあえず僅かな光でもあれば反応する」
右手の中に宿るはフランシスの魔術
破滅の鐘を倒すためにインドリームと結託した裏切り者という情報が漏れないために発動したのだろう
火族であるジェイクにとってみればフランシスの境遇は理解しやすい
「フランシスさん、最後に確認したい」
右手に刻まれた刻印をフランシスへ見せるように掲げ、ジェイクは冷たい目で見つめて話す
「破滅の鐘を倒すためにあんたは裏で動いた
そして俺たちインドリームを使ってその計画は完遂されるだろうな
けど、もし俺が二重スパイだとしたら?
あんたは目的の達成を見ることなく死ぬか、永遠に拷問へかけられる可能性だってある・・それでも、怖くないのか?」
ジェイクの冷たい瞳と信頼を揺るがせるような発言
だが、フランシスの信念は揺るがない
その表情を見れば誰でも戸惑うほどの固い決意に満ちていた
「死ぬことが目前に迫れば恐怖は感じるだろう
だが、かつての夢を諦め、破滅の鐘と結託して多くの命を奪ってきたこの手は血に染まっている
いつ死が訪れてもおかしくはない身だ
そうであれば、己の信じた道だけは突き通す。
例え、お前が二重スパイであり私が選んだ選択が間違ったとしても後悔はない」
「・・あんたみたいな人がインドリームに選ばれなかったのが不思議だよ」
「?」
「いや、なんでもないさ、
ただの独り言だ」
つい心の中に感じた呟きが漏れてしまった
ジェイクは独り言でまとめたが、フランシスには聞こえていないことを願うしかなかった
「それじゃあ、俺は言われた通りに動くよ」
「いいだろう
身柄を確保している仲間の元へ案内してやる、付いて来い」
フランシスが席から立ち上がるのと同時に結界は解かれ、それを待っていたように兵士の一人が扉を開けて待っている
「こいつを確保したインドリームの元へ届けろ」
「は!」
兵士に連れられ、浮かない表情で部屋を出て行く
確実に迷いを感じてるそれはフランシスにとって気がかりではあった
だが、己の信じる道を突き通すため、藁にすがる思いで託すしかなった
「ライアン、お前の無念は私が晴らそう
この身が朽ちるその日まで必ず・・・ーーー」
