第11章 破滅の鐘
「これは命令だっ!
奴らとの戦闘データをより多く持っているのはお前だ!」
「っ・・・!」
「させるか。」
「?!」
ヒルトの負の感情で満ちた低い声がドミニオンの背後から聞こえた
距離をとっていたはずのヒルトはすぐ最後まで迫っており
ドミニオンの背中から大剣が勢いよく突き刺さる
「ぐっ!」
「ボス!」
咄嗟に魔力を固めた簡易的な防御魔法を使用したことで心臓までは届かず、即死には至らなかったものの
神経に傷が入った事でドミニオンは力を失う
それでもリリースだけは逃し、任務を全うする必要がある
そのためならは残りの魔力を使い切り、命が尽きようとも関係なかった
リリースはドミニオンの犠牲を無駄にさせるわけにはいかないと感じ取り、建物の壁や屋根をつたって逃げていく
「・・風よ、我に力をーーー」
ヒルトは追撃をするための風を集めていく
だが、その目の前にジェイクが姿を現し、ヒルトの肩を掴みながら止める
「これ以上、力を使うなヒルト!
体がもたない!」
「・・・ジェイクか」
「俺がわかるんだな、ヒルト
だったらまだ力に飲まれてない・・今はインドリームの力を使うな
後は俺がなんとかするから!」
必死の説得に、ヒルトは応えようとせず風の力を弱めない
明らに異常な精神状態にジェイクはある事に気づく
それはヒルトの瞳の奥に刻まれた呪印だ
長い針と短い針が円を描くように中心を重ねて動き、その周辺には見たこともない文字が円形に描かれている
禍々しい魔力は闇や負の感情ではなく、まったく別の危険なものだ
「ははっ気づいたか炎のインドリーム」
「!」
「それはこの世の万物じゃない
だからこそ、俺たちはおびき寄せたのさ、お前をな。」
頭差状態のまま話すドミニオンにジェイクはすぐに言い返すことができなかった
破滅の鐘が狙っていたのはユリエフでもヒルトでもなかった
今回の襲撃はヒルトに秘められた力をジェイク自身に気づかせること
そうなればガウンから渡されたスクロールの内容と矛盾は感じられない
「くそっ・・!
ヒルトをこうさせたのがお前達の力じゃなく、ヒルト自身の中に眠る別の力に飲み込まれたせいだったのかよ!」
「くくくっそうだ
だからこそ、飛行船でお前達を襲撃し、そして水と大地のインドリームを半殺しにさせることで奴の心は理性を無くす」
