第11章 破滅の鐘
「風よ、舞え!」
ヒルトの声が大きく響いた
路地裏にいたジェイクの耳の奥まで届く声は
明らかに憤りが混ざったものであり、異常なほど風が荒ぶる
「ヒルト、お前まさかっ!」
焦りという一言ではおさまらない
ヒルトの憤りが己に向けられているのではないとわかっていても手汗が冷や汗がひくことはない
それほど酷く負の感情がジェイクには伝わっていた
このまま走り続けるのは時間が足りない
そう感じたジェイクは爆炎を両足周辺に作り出し、勢いよくヒルトの声がする方角へ向かう
爆炎が起こす威力は並の足では耐える事が困難であり、連続で使用するのは危険だ
だが、そんなことを言っている余裕の方がない
迫り来る危険が高いのは己の体の負担ではなく、仲間の崩壊
そう、肉体的な崩壊ではなく、精神的な崩壊だった
薄暗い路地裏を勢いよく抜けて行く中、ジェイクは過去の光景を思い出す
かつて、共に戦った仲間が危険になったことで駆けつけようと闇の中を走り回ったことがある
インドリームとして、目覚めていなかった頃は足の裏が靴擦れするだけで痛みを感じ、スピードが落ちていた
だが、今は筋肉がはち切れそうになってでもスピードをおとすことはなかった
それはインドリームとして能力に目覚め、同時に肉体も強くなったからか
または、先のガウンから渡されたスクロールに書かれていたとある人物からの指示
それを全うするためなのか
ジェイクにとってはどちらが基盤となってここまで動く事が出来るのか分からない
どちらにせよ、今は破滅の鐘からヒルトを守る
それが第一優先だった
「ヒルトーーーッ!」
路地裏を抜け、広場にたどり着いたのと同時に目を見開く
それは先まで笑顔だったアランとイリヤの額や腕から血を流し、横たわる
その周辺には巨大な竜巻がアランとイリヤを守るように出現していた
息をきらしながら大剣を握りしめているヒルトの両手からは
魔力を過大に使用したことによって拒絶反応による出血
瞳は敵を捉え、獲物を捕らえた捕食者のように逃がさない
「はぁ、はぁ」
「ボス、こいつやばいよ!
話で聞いてたインドリームと違うっ!」
先まで余裕で襲いかかっていたリリースとそのボス、ドミニオンは腹部や肩から血を流して警戒していた
「リリース、奴は危険だ
お前がこの情報を上に持ち帰れ!」
「で、でもっ!」
