第11章 破滅の鐘
口に出したい内容だが、そうせずに頭の中で考えていたのは今話すことではないからだ
話せば己の過去に触れられてしまう
それだけは避けなければいけない
「ねぇユリエフちゃん、2人の傷を治すのにイリヤも手伝える事ないかな?」
「そうですね、でしたら綺麗な布を4枚程と、夕食に簡単な食材を買って来てください
幸い、部屋の中で調理をすることもできるほど設備は充実していますし」
鉄のコンロと木のテーブル
引き出しには果物ナイフや調理器具が揃っており
六人程度の食事は可能だ
「いいわね、じゃああたしもイリヤと買い物へ行ってくるわ」
「ありがとうございます、アランさん」
「アラン、俺も行くよ
もしものことがあれば大変だ」
頼り甲斐のある言葉と裏腹に不安気味な表情は頼りなさも感じさせる
ヒルトの言葉にアランとイリヤは目を合わせ、肩をすくめながら断る
理由としてアランとイリヤの次に動けるのはヒルトであり、風の力は建物内で襲撃があっても臨機応変に対応できる
雷や炎、光の力は範囲攻撃として威力は誇れるが扱う者によっては
柔軟性が欠けることもあった
「ライセイが動けるならヒルトも一緒に来て欲しかったけど、今は動けない
併せてジェイクも動けないし、敵の狙いはユリエフの可能性がある・・宿を手薄にするわけにはいかないでしょ?」
まともな意見は誰が聞いても正論だった
アランの提案に反対することは出来ず、そのまま宿を出て行く2人を見送るしかできなかった
宿を後にするアランとイリヤは周辺の商店街を回りながら
食材が並ぶ店へ近づいている
そんな中、イリヤと足が止まり、一つの宝石店に目が釘付けになった
「見て見て、アランちゃん!
スファレライトだよ!」
「え?
私にはただの石の塊にしか見えないけど。」
炭を被ったような灰色と焼け焦げた後のような漆黒が混じりある結晶はアランから見ればただの石でしかなかった
だがイリヤには石の奥に隠れている秘密に気づいている
「土族はこういう石の見分けに特化してるんだよ
この石はとっても面白い構造だから、みんな見たら驚くと思うよ」
「・・そう、なのね」
「おじさん、この石はいくら?」
簡易的なテントの前に並べられた石や宝石の店主は中年で小柄な男であり、顎を隠れるほど伸びた立派な黒い髭を触りながら微笑ましくこちらを見て口を開く
