第11章 破滅の鐘
「破滅の鐘?
亜人や火族が集まる殺し屋の集団か」
「はい・・・ご存知でしたか」
「そういう存在がいるというのだけは知っている
まさか今回インドリームを襲撃したのは奴らが?」
「この結界に閉じ込められたのであれば、そうでしょう」
薄く光るライアンの魂は人の手を形成し、真上に指を指す
そこには銀色に輝く月が二つ浮かび上がり、逆方向の空には真っ赤に燃える太陽が照らしている
だが空間は霧がかかりながら暗く、見える星は見せかけだと判断がつく
不規則に動きながら星々が不気味な笑い声を出しながら
クライヴやアークを見ている
小さな子供が親をからかう時に聞かせる無邪気な声
だがその奥には黒く染まった中傷という負の感情が練りこまれている
「この結界は一つの世界そのものです
そして生者の魔力を吸い上げることで更に力を増す。
私はここに封じ込められ、脱出を試みる前に魔力がついえました」
「・・・あの星々は監視役か」
「ただの監視役ではありません
敵意を見せればすぐに反撃し、対象が死ぬまで攻撃は止みません」
「試したことがあるのか?」
「ここに封じ込められた時、仲間達と試し、結果敗北したのです」
「・・・」
クライヴは右手の平に闇の炎を浮かび上がらせ星を見上げながら沈黙する
ライアンにとって見ればクライヴが次に行う事が何なのか
想像がつかなかったが、長年共に過ごしたアークは理解できた
「貴方様をお守りし、この魔術師の魂も傷一つ付けずに敵の攻撃を防いで見せましょう」
「あぁ、少し本気で放つがアーク・・お前の力なら問題ないと信じている」
「えぇ、貴方様の期待に添えてご覧いたしましょう」
右手を胸に当て、瞳を閉じてお辞儀をするアーク
ライアンの魂を浮技魔術によって己の後方に強制的に移動させる
死者の魂という不安定な存在のせいもあるが、それ以上にライアン
は不安に満ちていた
絶対抜け出せないと思っていた結界の中の敵に
闇堕ちと魔術師二人だけで迎え撃とうとしているのだ
僅かな攻撃でも星へ放てば、何十倍の威力で反撃され、対象者が生き絶えるまで続けられる
そうやって仲間達が死んでいく姿を見続け、そして己の体も朽ちた
その話をしてもなお、敢えて敵対する理由がライアンには理解できないのだ
「し、死ぬ気ですか?!」
思わず口走った言葉に先に反応したのは目前で構えているアークだった
