第11章 破滅の鐘
「意識がはっきりとしてきましたか
そう、この私こそ魔導国建国者であり、魔術師最高位クラスのアークです」
「何故、アーク様が?
それに・・本当にいらっしゃったなんて・・・」
アークという名にはどんな魔術師でも朦朧とする意識を鮮明にさせるほど強力な力があった
世界中の魔術を超越し、独自の魔術を作り出した始祖の存在
現世に生きている魔術師が使用する多くの魔術は、アークが作り出したものが基盤となっている
数百年前に突如姿を消した過去を持つアークは魔術師界の中では都市伝説のような存在でもあり、存在していたことを神話のように語る者も多い時代に、本人が目の前に現れたことで
ライアンは揺らめく魂だったがひれ伏そうとする
「私に平伏すのはやめない
貴方がする相手は私にではなく、私の主人なのですから」
「神位クラスの大魔術師、アーク様が主人と呼ぶその方は一体・・?」
ライアンはぼやける顔を一人の存在へ向ける
赤い宝石を埋め込んだように赤く光る瞳
死体と死者の魂が渦巻く異空間の中で
ただ一人、只者ではないオーラを感じる
「ーーークライヴ・ベネディクトだ」
自ら名乗り、死者の己に近づいてくるクライヴに
ライアンはどこか闇の恐怖を覚える
虚ろな魂を一振りで消してしまえる程の魔力
生きていればどれだけ体が震え、目を合わせることも迷っていただろう
だがそうならずにいれたのは自分が死者であり、結界に閉じ込められ、天へ魂が浄化されずにいるからこそだ
死してなお、これまで生前と同じ感覚を味わえる高揚感と
これから訪れる予想もしない現実
ライアンは現世に生を受け、初めて魔術師として生きていて良かったと思った
「第五級クラスの魔術師である存在が、何故ここで死を遂げたのか、俺は確認しておきたい」
「その件は・・・話せば長くなります」
「構わない。
必要な情報であればその箇所だけ詳しく聞くつもりだ」
「・・・」
ライアンは口を紡ぎながら辺りを見渡し、動かすことのない肉体があるように深呼吸を重ね、深いため息をつく
「ーーーーそれは、とある旅の途中に突如現れた
破滅の鐘という殺し屋の集団に襲撃されたことがきっかけです」