第11章 破滅の鐘
「失礼しました。
主人のご命令前に欲を出してしまった愚行をお許しください」
「許してやる。
そして頭を上げろ・・お前にはまずこの結界に閉じ込められている死体の情報を集めてもらう
次に脱出方法と、 俺を閉じ込めた男の正体を出来る限り収集してほしい」
「畏まりました。
このアーク、貴方様の期待に応えるために早速力をふるいたいと思います」
アークは両掌を合わせ、ゆっくりと並行に手を離して魔力の塊を作り上げていく
光り輝く魔力の延長線は10種類の宝石が埋め込まれた銀色の大杖へと姿を変え
とぐろを巻く龍のように漆黒の二枚の翼が大杖の上部へ伸びている
杖の上部には幾億の銀河を埋め込んだ漆黒の水晶玉が浮かんでいる
魔術師の頂点ともいえる神位魔術師のアークにだけ扱える武器だ
「私専用の武器を作り出してもこの肉体は朽ちないということと、五つの宝石を保持することが認められている第五階級の魔術師・・上位クラスは伊達ではありませんね」
「あぁ、上位クラスの魔術師であればこの結界を破る方法くらいあるはずだ
それが出来ずにここで死んだ理由を知りたい。
おそらく、何かしらの理由で魔法が使えなかったのだろう」
「承知いたしました。
そちらを優先してお調べいたしましょう。」
アークはクライヴから数メートル離れ、流れ浮く死体を踏み潰しながら白銀の大杖を水の中に突き刺し、銀河の水晶玉から浮かび上がるルーン文字に触れる
小爪程の大きさのルーン文字は赤く光り、アークの指の動きに合わせて有象無象に浮かんでいた状態から一文へと変わっていく
「汝に告げるーーーー
我が魂を介し、尊き名を天へ届けるため、今ここに還元せよ」
一文となるルーン文字はアークの体に纏わりつき、心臓部分から明日白く光る魂を浮かび上がらせる
「彷徨える魂よ、現世に還元した汝の名は?」
「ーーーライアン」
人型の白い魂は虚ろな声で話した
か弱い女性の声は今にも消えてしまう程の声量であり
静まり返った結界の中でなければ聞き取ることは難しいだろう
水一滴の音でさえ、ライアンの声を遮ってしまう
クライヴは歩みをやめ、冷静にアークとライアンの会話を聞いていた
「ライアンですね
我が名はアーク、上位クラスの魔術師であればこの名を知らないとは言えませんよね?」
「アー・・・ク・・?
アーク、様?!」
