第9章 ディオン連邦共和王国
暗闇の中、目を覚ました時にはヘイデンと名乗る男と
ユーインと名乗る少年が目の前に立っていた
アレックスは灰しかのこらない森の中、うつ伏せの状態で倒れ
耳に着いている見慣れないピアスに気づく
「こ・・れは?」
「君を元の姿に戻すため・・いや、意志を取り戻すために我々が着けた制御装置だ
そのピアスをつけている以上、君の感情に作用されて魔族化することはない。
ーーーあぁ、そうだ、我の名を言い忘れていたな
我はヘイデン、とある組織の者であり君と似た者同士だ
よろしく、アレックス」
黒い手袋を取り外し、素手で握手を求めるヘイデン
アレックスは状況が掴めない中でもまずは手を取り、上半身が裸である己の姿を見つめ黙っていた
「とりあえず、この服を着てたらどうかな
ヘイデンの予備の服だけどサイズは合うと思うよ」
ヘイデンの傍に立っていたユーインは黒いマントと
コートが一体型になった服をアレックスに渡しす
「はじめまして、アレックス
僕はユーイン、法術師で組織に属しているんだ」
「ーーーヘイデン・・ユーイン・・」
虚ろな目をしながらアレックスは両者を見つめ
操られているかのように体だけを動かし服を着ていく
だがその表情は人形のように変わらない
なぜならアレックスは時間の流れが把握できないからだ
最後の記憶は無残に魔族化した同族に殺された妹の亡骸を見つめた瞬間であり
次に目を覚ました時には暗黒戦争が終結していたなど、考えられないからだ
それでもヘイデンとユーインの説明により己は闇堕ちとして第二の生を受けた事を改めて実感し、組織へ入り、協力することに決めた
殺してしまった同族や他種族への償いをしたかったのだ
そんな中、生き残った獣族と人間種が同盟を結び、一つの国を建国するという情報が入る
かつて森を焼き払われた獣族達は生き残るために
人間種と手を結ぶことにしたのだ
かつてアレックスの顔を覚えている同胞がどれほどいるのかわからない
それでもかつての仲間達を一度でも目にしたいという気持ちが先走り
組織の一員として建国に力を貸した
正式には人間種側の護衛等が主な仕事になったが
人の力では採取できない資材の調達も行った
人間達は組織に多額の金額を払うことで有能な人材を雇い
技術を進化させ、瞬く間にディオン連邦共和国という国を作り出した
