第9章 ディオン連邦共和王国
「あともう一つ聞いておきたい
さっき見せた赤い宝石の件だ・・
それを埋め込まれた魔族と戦ったことがあるのか」
クライヴの問いにすぐに答えようとしなかったのは
一瞬、応えてもよいのか判断にまよったからだ
真実を語ることで組織内での極秘裏の事も触れる
そこを避けさせてくれるほど、クライヴ・ベンディクトは甘くない
この青年は己が知る必要が判断した情報は最後まで聞きだす
それはどんな手段を屈指してでもだ
だからこそヘイデンは口をつむぐことは止め、全てを語る為に口を開いた
「戦い、多くの仲間を犠牲にして勝利をつかみ取った
その対象者を救うことはできなかったが、狂暴化した原因の宝石を摘出し、ここに納める事に成功したのだ」
「―――まて、救うことはできなかったとはどういう意味だ?」
「人の意志を取り戻させ、魔族でありつつも力に溺れることなく己の意志で生きること。
つまり、我々のように抑制装置をつけることで人のように自由に思考し、能力も制御して扱える
そうすれば世界の敵とは見られず、インドリームと戦うことはないだろ」
「魔族となった者は世界の脅威として、インドリームに浄化される対象とみられる・・
けど、僕たち組織が人に近い状態へ戻してあげることで
彼等は狙われる身ではなくなるのさ」
「・・・・。」
インドリームにとって救いとは、魂をインドリームの力で浄化し、命を一からやり直すこと
浄化された魂は転生し、新たな生として生れ落ち、再び光へむかって生きる
インドリームに浄化された魂は強い夢の力を付与され
闇に進んで身を染めようとはしなくなる
だからこそ、インドリームが魔族を倒すことは正義と言われ
世界の意志そのものとも評される――――。
一方、魔族や闇側ではそんな見解はない
組織の言い分では救われるとは転生や浄化ではなく、その生で償うことだ
魔族として闇に堕ちる者の理由はさまざまであり、皆がなりたくてなっているのではない
生まれつき能力を持ち、些細なきっかけで心が闇に染まり、負の感情が爆発したことで事故的魔族化するケースもある
そんな者が望まぬ転生をされ、記憶は消えた状態で生まれ変わるなど光側の者達のエゴでしかない
魔族化し、多くの者を傷つけたのであればその手で償い、再び生きるチャンスを与えるべきだ
今、目の前にいるヘイデンはそう言っている
