第9章 ディオン連邦共和王国
「クライヴ・ベネディクト君
君も望まず闇に堕ち、今は君の意志で友を守る為に旅をしているだろう
そうできるのは、君が今の状況に満足しているからだ
そして、闇の力が全て危険ではない。
アレックスのように闇の者の傷を癒すには、天族やインドリームではできない
対応できるのは同じ闇の者だけだ」
ヘイデンの話は正論であり、筋が通っている
だからこそ、クライヴは反発する気持ちは生まれず
抱いていた疑いも晴れていく感覚があった
「―――けどね、この宝石を埋め込まれた者は
インドリームの力も通じなければ、組織の抑制も効かない
待っているのは本当の意味での死か、封印のみだ」
「そうか・・
お前達はどちらをとった?」
「苦戦の結果、封印だよ
殺すことがどうしてもできなかった
この宝石は、対象者の意志ではなく強制的に埋め込まれたものであり、我々はその瞬間を目撃していたからな
だから、この宝石には対象者の魂も結びつき、小瓶の中で封印されている」
宝石の話をしている中、クライヴはまた心臓が締め付けられる感覚がした
恐怖からでる症状ではない
確実に体の中から赤い宝石の魔力に、闇が共鳴している
初めて見るはずの宝石に、己の中心から歓迎するように闇がうごめく
まだ確認しておきたいことがある
だが、これ以上宝石の事を考えれば考えるほど危険な気がした
どうしようもない中、ヘイデンとユーインは腕に付けた時計を同時に見た
「時間だ、クライヴ・ベネディクト
我々はこの国を出て、次の任務へ向かう
短い間であったが、貴重な出会いであったことを感謝する」
「またどこかで会おうかもしれないね
僕たちじゃなくても、同じ組織の存在と出会った時は
仲良くしてあげてね」
「・・・あぁ。」
漆黒のコートを覆い、瓦礫の上を飛び越えながら
すぐに姿を消すヘイデンとユーイン
その姿を見届け、クライヴはすぐに瓦礫の山に腰をかける
「っ・・」
締め付けられそうな感覚がまだ心臓に残っている
「クライヴ・・大丈夫?」
「・・ミレイア・・」
半透明の姿で目の前に現れたのは守護霊化したミレイアだった
不安気な表情でクライヴの心臓部分へ手をかざす