
第9章 ディオン連邦共和王国

「単刀直入にきく。
この国にはまだお前達の仲間がいるな?」
「ーーーそれがどうかしたのかな」
平然とする姿はもはや尊敬するほどだ
ヘイデンはクライヴの問いがどの時点で浮かび上がったのか
その原因に心当たりはない
確かに仲間達は他にもいる
その事実に変わりはない
だがそんなことがクライヴに知られたことで隠すことはない
だからこそ毅然と、平然とした態度を貫く
「次期国王の近くにいた兵士・・あいつらから微かに闇の魔力を感じた
そして王自身からもな
あの2人をこの闘技場に呼び、インドリームとアレックスを宮殿へ招くように提案したのは元々お前達ではないかと感じた」
「ーーーなるほど
では聞こうか、何故そう考えたのかな?」
「カンスが魔族化し、闘技場に下級魔族が湧いた時に次期国王と周辺の兵士の動きが早かった
そしてカンスを倒した後、次期国王は傷一つない姿でタイミング良く現れたからな
只の人間の男が魔族と対峙し無傷はおかしいだろう
そうなれば必然的に次期国王の近くにいた兵士が魔族より強いということになり、王自身も魔族という種に慣れていることになる」
研ぎ澄まされた洞察力
まさに長年生き続け、数多の経験をしてきたクライヴだからこそ推測できた内容だ
ヘイデンとユーインは1日でこんなにも尻尾を掴まれることがなかった
平然としていた姿は微かに崩れ、冷静とはいえ感動し武者震いしていた
「素晴らしい。
只、あのフォレスト次期国王は組織の者ではなく、我々の協力者というごく普通の人間だ
兵士は・・抑制装置を付けた我々と同じ魔族だがね
勿論、王と我々の契約により魔族であることを他の者に明かすなどしないがね」
微かな笑顔を見せながら、清々しく話すヘイデン
「お前達の目的はなんだ
あれほどアレックスを避けていたのに、何故全面的に協力しようとした?
アランに説得されただけではないだろう」
「・・・」
微かな警戒を見せながら話すクライヴ
ヘイデンは暫く沈黙し、胸ポケットから一つの小瓶を取り出した
それは真っ赤に光る禍々しい魔力を浴びた宝石
便の中で不自然に浮いているそれは、クライヴにとってすぐに危険なものだと判断できるほどの邪気が感じられた
宝石を見ただけで滲む手汗
記憶にはないが体は覚えているように、全身に寒気が走る
「なんだ・・それは?」
僅かに眼を赤く光らせ、敵意を持った表情になる
