第9章 ディオン連邦共和王国
血流のコントロールが効かなくなったことで
本来の痛みがジーナを襲う
それでもユリエフの治癒力は凄まじく、切りつけた傷口は瞬く間に修復されていく
まずは止血を優先的に行い、次に神経の修復
最後に細胞1つ1つを復元していく治療術は繊細で
天族であり、光を司るインドリームの力を改めて関心するジーナ
「ーーーこれで大丈夫ですね」
傷跡すら残さず治癒された腕を見ながら
ジーナはその場にいたクライヴ、ヒルト、ユリエフを含めるインドリーム全員に頭を下げた
そしてインドリームを避けていたアレックスでさえ
自ら進んで立ち上がり、同じく深く頭を下げる
照れくさそうにするインドリーム
だが問題はまだ解決していない
破壊された街
突然の魔族発生により隣国との婚約も破棄になっただろう
財政を支えていた神官による暴走は国にとって危機的状態だった
「王よ!危険です!」
傷だらけの兵士が遠い場所から1人の男に声をかける
だが男は乗っていた馬から降り、何も言わず歩き続ける
向かった先はインドリームとアレックス、ジーナがいる場所だった
「お兄様っ?!」
「!」
黄金のふさべりをつけたマントは煙などの汚れで
黒く滲んでいる
それでも厳格を失わず、凛々しく振る舞う男の前に
ジーナとアレックスは敬意を表す
この男こそ次期国王として君臨する男であり
ジーナの兄にあたる
父親にあたる王は既に病で倒れていることから
実際に政権や国を取り締まっているのは息子である次期国王だ
国の中で最高位者が危険を承知でインドリームの元へ来たのは
それ相応の理由がある
理由は1つ
国を魔族から守ってくれた御礼だ
「お前がインドリームのリーダーか」
次期国王が真っ先に目を止めて話した相手はヒルトだった
「あ、はい」
「この国を守り、さらに妹まで守ってくれたことを感謝する」
「いえ、そんな・・
俺たちはインドリームとして当たり前の事をしたまでです」
「だとしても、国民達も君達を讃えている
だが同時に今回事件を起こした犯人の事なども確認したい
そしてこの責任を誰が取るというかもな。
だからこそ、明日にでも官僚達と緊急会議を行う
そこに出席してくれないか?」
「・・・。」
インドリームを迎える反面、警戒をやめない次期国王の姿に
ヒルトでさえ身構えるところがあった
それでとこのまま国から出る事も出来ない状態だ
