第9章 ディオン連邦共和王国
「決まりだな。」
クライヴは闇で作り出したナイフを片手に持ち
もう片手で黒い文字で魔法陣を描く
「ヒルト、ユリエフ
手伝ってくれるか?」
「え?」
「私達が手伝う事ができるのですか?」
「ヒルトは風を操り、ジーナの血を少しずつこの魔法陣の中心に落とし、ユリエフは儀式後すぐに傷を塞いでくれ」
指示を出しながら魔法陣を完成させていくクライヴ
それはアレックスを中心に描かれており
ジーナはちょうど傷口に血が落ちるように手を伸ばし立つ
ヒルトは出来るかもわからない内容を頼まれていることに
不安を感じるがそれでも1番の不安を抱いているのは
供物となるジーナである
それでも不安気な表情隠すように
アレックスだけを見つめていた
「俺がジーナに傷をつければすぐにヒルトは風を出せ
・・そしてジーナ、出血量をコントロールするとはいえ痛みはある。
それでもーー」
「大丈夫よ、クライヴさん
あたしはアレックスを助けたい
それがあたしの夢。
だから多少の痛みなんて耐えてみせるから」
「ーーー了解した
では、始める。」
クライヴの合図と共に儀式は始まる
持っていたナイフでジーナの腕に傷をつけ
すぐにヒルトの風で包ませる
風は傷口から流れる血流をコントロールし
少量の血を少しづつアレックスへ流し込んだ
それはまるで一滴一滴の水が水溜りを作るように静かで
切りつけた傷口と流れる血は反比例していた
本来クライヴがつけた傷をは深く
ただの人間の少女にはあまりにも残酷だろう
それでも血がかすり傷程度でしか流れないのは
ヒルトの繊細な能力を使用し、一瞬たりも集中を欠かさず行っていたからだ
流れるジーナの血はアレックスの傷を癒やし
穴が空いて傷は瞬く間に修復し、骨や呼吸器官が再構築していく
虫の息だったアレックスは人並みの呼吸に戻り、朦朧としていた意識ははっきりとしてくる
ボヤけていたジーナの表情が鮮明に見えてくる中
多少の痛みと戦いながら元に戻っていくアレックスを見て
溢れそうな涙を浮かべている
「・・・よし、儀式は最高だな
ユリエフ、この術を終了させた後、ヒルトと入れ替わり
すぐに傷を癒してやってくれ」
「はい!」
クライヴは魔法陣を消していき、同時にヒルトも風の力を弱め
風が完全に消える前にユリエフは治癒を続けた
「っ・・」
「大丈夫です、すぐに治します」
