
第9章 ディオン連邦共和王国

「だったら、カンスを倒せばアレックスさんは助かるって事だな」
「え?」
アレックスは目を丸くして驚く
想定していたのはヒルトが己に剣をむけることであり
救おうと考えはしないと思っていた
客観的に見れば誰がアレックスを救う事を考慮するか
肉か避け、骨が骨格を無視して突き出ていく
既にアレックスの両手は獅子のように毛深く鋭い爪が生えている
着実に魔獣化していくのを見ていても、ヒルトは諦めようとしなかった
「クライヴ!
力を貸して欲しい!」
ヒルトの声に応えるため、空中で戦っていたクライヴは大鎌を持ちながら駆けつける
「アレックスさんの闇が少しだけでもいいから
抑えることはできるかな?
俺達がカンスを倒す間、時間を稼いで欲しいんだ」
「・・・できるだけ力になるよう最善は尽くそう
それでも闇に堕ちるかどうかはアレックス自身になるがな」
「ありがとう
アレックスさん、俺は絶対諦めない
だから貴方も帰りを待ってくれているジーナさんのためにも
諦めないでほしい」
ヒルトは大剣を構えながら風を覆い、アレックスには背中を向ける状態で話していた
アレックスから見れば小さな青年の背中だが
それでも心強く感じる
仲間を信じ、夢を諦めず突き進むその姿は
アレックスにとって眩しすぎるものだ
あまりにも眩しい姿に目を背けたくなる気持ちは、アレックスだけではなかった
隣で立って闇の抑制術を発動させていたクライヴの表情からも
同じ感情が感じられる
「・・彼等はすごいな」
アレックスの元から離れ、仲間に指示をしながら戦うヒルトの姿を見ながら
静かに呟く声はクライヴには届いていた
「そうだな、あいつらみたいな存在がいるから
この世界は壊れかけても滅びることはない
俺達のような堕ちた者が、再び闇に飲まれかけようとも諦めず、正しい道へ導こうとする
それがインドリームだ」
右手に闇の球体を付与し、アレックスの体にあてながら話すクライヴ
球体はアレックスの体から溢れる闇を吸収してゆき
クライヴの中へ流れ込んでいく
「・・僕は君が羨ましいよ、クライヴ・ベネディクト君
導いてくれる仲間がいて、闇を抑制する力も持っている・・
どうすればそんな力を持てる?」
「ーーーー。」
アレックスの問いはクライヴにとって直ぐに答えれる内容だ
それでもすぐに話さないのはすぐに思い浮かんだ答えが正しいとは思わなかったからだ
