第9章 ディオン連邦共和王国
アレックスが発動させた落雷はカンスの目前に落ち
覆われていた闇の霧が一時的に晴れた
僅かに光る宝石が胸の中に埋め込まれている
それに気づけたのはアレックスとインドリーム全員だ
だがすぐに闇が隠すようにおおってゆき
カンスに力を与えていく
「こざかしい!」
アレックスの能力によって身体能力が低下しているが
それでもカンスの動きは激しく
毒の鞭と水晶の剣を弾丸のように無数に飛ばして攻撃を繰り広げる
「風よ!全てを守りたまえ!《ウィンド・バインド》!」
水晶の軌道を寸前で変えていく防御系の風を作り出し
各々に付与するヒルト
(この風があればカンスの弱点まで一気に近づける!)
「うおおおおお!」
白銀の剣を握りしめ、勢いよくカンスに近づくアレックス
闇の霧に覆われていく中それでも貫く場所を見失わない
薄く光る宝石
それを潰せばすべてが終わる
鋭い剣が宝石へ突き刺さる直前
アレックスは動きを止める
宝石と思われていたものは
禍々しく放つ闇の瘴気を溢れ出しながら
巨眼になり、それを守るように獣族の屍が周囲に埋め尽くされていた
「なっ!?」
アレックスは衝撃と同時にすぐに後悔へとかわる
想像外の光景に剣を突き刺す意志に迷いが生じたことで
カンスに隙を見せてしまった
「馬鹿め。」
カンスから発せられる罵倒と同時に
巨眼から眩い光が発せられた
光と同時に灼熱と烈風がアレックスを襲い
握っていた両手の皮膚が溶けながら吐き出されるように
闇の霧の中から追い出され、無様に地面に叩きつけられる
「っ!」
「アレックスさん!」
仰向けで倒れるアレックスはすぐに起き上がろうと剣を突き立てながら
カンスを睨む
ヒルトは両手の昼が溶けて肉と筋肉が剥き出しになっている状況に焦る
それでも闇堕ちの体にユリエフの治癒は効かないことから
傷が悪化しないように、両手に風を覆わせて外部からの刺激を防ごうとした
「風よ、守りたまえ」
ヒルトの大剣からは風が生み出される
だがアレックスの両手に絡まらず、避けていくように風は消えていく
「効かない・・!?」
「無駄じゃ。
そいつの体はもう闇に染まり、ワシの魔眼によって更に闇が深くなったからな」
「魔眼?
闇が深くなったってどういうことだ!」
ヒルトは声を荒げながらカンスに聞き返す
そして高らかに笑う声が結界の中に響く
