第9章 ディオン連邦共和王国
闇の霧が覆われる結界の中
巨腕を回しながら肩の関節を鳴らして立っている魔族がいた
全身には赤く光る血管が浮き上がり
頭部から二本の角を生やし、全身が漆黒の水晶で覆われている
胴体よりも倍以上太い両手には薔薇のような鞭がまかれている 棘からは毒液が染み付き、緑色の液体が地面に滴り落ちるたびに穴が空くほと溶かしていく
黒く染まった目を6つ顔に浮かび、1つ1つが違う方向へ視線を向けながら様子を伺っている
胸の中心から感じる鼓動以外は静寂が続く
「ーーーー来たか、インドリーム」
裂けすぎた口元はニヤリと笑いながら
魔族は巨大な顔を足元へむけた
光で全身に包んだインドリームとアレックスは
目の前にいるのがカンス神官であることを理解していた
そして何かしらの方法で強力な魔族化し、正気を保てていることも。
10メートル程ある巨大化した魔族・カンスは
6つの目を1人の男へ向ける
「アレックス・・・
魔獣の呪いから這い上がって来たか
つくづく使えん奴じゃな
貴様がもう少し独占欲が強く、あの王女に執着していればよかったものの。」
深い息を吐きながらカンスは語る
その内容にアレックスとしては言い返したいことが多かっただろう
それでもここで怒りに任せてはそれこそカンスの思う壺である
「貴方は僕の闇の力を利用しようとした
そして僕に近づき、組織に所属していた頃に積極的に接触して兵士へ勧誘した
あの時は純粋に信じていましたが・・全て計画されていたことか」
「その通り。
組織に所属していた貴様の力は利用できると判断して
手駒にさせるつもりじゃった
少し手違いがあって予定通りに進まんかったが、まだ方法はある
貴様のその夢、利用させてもらうぞ」
「そんなことさせない」
「!」
ヒルトは大剣を構えながらカンスへ向かって強く言う
「アレックスさんの夢をあんたみたいな奴に利用させない」
「かははは!
ガキどもが、ほざいとれ
貴様らの力ではどうにもならんということを
おしえてやろう!!」
カンスは奇声を上げながら腕に絡めていた鞭を散乱させ
腕を勢いよくヒルトへ向かって振り落とした
「皆んな、避けろ!」