第9章 ディオン連邦共和王国
疑うことは得策ではない
そうわかっていてもアレックスは素直に受け止めれなかった
「カンス神官は組織が危険視している敵と繋がっていた
そしてそれを止めるためにはインドリームの助力が必要でね
我々に水のインドリームが共闘を提案したのだ」
「・・・」
「我はお前の夢が叶わないことを願ったが・・・
冷静に考えてみれば我も昔はお前と同じことをしていた」
「!」
「だから、無意識に昔の自分と重ね合わせていたが
アレックスと我とでは違う。
そう考えれば自然と考え方を改めることができた」
ヘイデンは穏やかな表情で話し続け
アレックスは唖然とするが、心のどこかで欠けていた穴が埋まった気がした
「ありがとう、ヘイデン」
「礼にはおよばない
あとはあの神官を倒す必要がある」
「それは俺たちが引き受けるよ」
自ら名乗り出るヒルト
「俺たちはこの瞬間のためにインドリームとして来たんだ
皆で力を合わせればすぐに倒せる」
「さすがインドリーム
だが、カンス神官の能力は未知であり、弱点もわからない状態で結界の中に入るのは危険ではないか」
ヘイデンの言葉に、アレックスは一つ思い出した
それはかつてカンスが体調を崩し、アレックスが看病したことがある
その際に胸に赤い宝石のようなものを埋め込んでいるのが見えた
そして宝石からは魔力が流れていた
当時は看病をすることに精一杯の力を注いでいたため
宝石の事は気にならなかったが
今考えてみれば不自然な光景だった
そして宝石の色が薬瓶に入っていた液体と同じ色であることに気付き
一つの可能性が導かれた
「僕なら、カンスの弱点を暴けるかもしれない」
「!」
「本当か?!
アレックスさん!」
「ああ、確実ではないが、おそらく胸に埋め込んでいる宝石から邪悪な魔力が流れているはずだ
だから、僕も共に戦わせてほしい」
強く志願するアレックスの目は揺るがないものだった
ヒルトは先の件もあり、心配するが止めることはしなかった
一人の少女を除いては―――。
「アレックス、行かないで・・危険よ!」
「ジーナ」
「アレックスが傷つくところは見たくないの!」
「・・・」
両手でアレックスの腕を掴むジーナは涙ぐみながら
必死に止めようとする
「貴方の夢は私の夢が叶われること。
だったら、私の夢はアレックス、あなたが傷つかないことよ!」
「ジーナ・・!」
