第7章 闇の神
あまりの恐怖に、目をつむり、イリヤを庇うようにアランが覆いかぶさる
だが、その更に前にジェイクが灼熱の炎ので周囲を被いつくす壁を作り上げ、小さくなった銃弾は次々と焼け、溶けていく
見た目は獄炎の壁だが、その中の温度は2000度を超えていた
魔力で増幅させられた銃弾とはいえ、もとは鋼で作られている針が原料
灼熱の炎の中で溶けて跡形も消え去る
信じられないほどの魔力を放ち、それでもふらつくことなく立ったまま次の攻撃に耐えれるよう、篭手を両手にはめ、構えるジェイク
アランは何から言えばいいかわからないまま
疲弊したイリヤに水を飲ませ、回復するよう助けた
「大丈夫か、アラン、イリヤ」
「え・・あ、うん」
「ありがと・・ジェイク君・・・」
息を切らしながら、両手からの出血に痛むイリヤ
すぐにユリエフの治癒を受けたいところだが、ユリエフはアルトリアと対戦し、その戦いの衝撃破はここまで届くほど強力な戦いだった
「とりあえず、お前はそこで―――」
「よそ見なんて、余裕じぇねぇか」
「?!」
炎の先からヴァンのイラついた声が響いた
それは厳密にいえば、炎の先ではなく
炎の中からだった
銃弾すら溶かす熱の中で、機械の義足をはめた人間がいれるわけがない
そんな常識的なことを考えているうちに
目の前には現実が忍び入っていた
「チェックメイトだ」
「え」
燃え上がる炎の壁の中、ジェイクの目の前から
無傷の男の腕が伸び、その手に握られている銃口はジェイクの右足にむけられ、そのまま発砲された
銃口から放たれたのはただの銃弾ではなく、魔法弾といった魔力を帯びた弾だった
鉄の弾の周辺に魔力を被わせることで、強力な貫通力と傷口を大きくさせ、一気に対象に穴を空けれる特殊なもの
それがジェイクの右太ももを貫通し、大量の血が噴き出し
ジェイクの叫び声が挙げられた
「っあああぁぁぁぁぁ!!」
激痛で耐えきれず、炎は瞬時に止み、その場で右足を抑え込み、しゃがみこむジェイク
止んだ炎から、まったく傷を負っていないヴァンが立ち、ジェイクを見下ろしていた
「ジェイク!」
「おっと、動くんじゃねぇぞ、水族のねえちゃん
そのまま土族の女の子の看病しておけよ
そこから動けば・・こいつの頭は吹っ飛ぶぜ」