第1章 三角形 case1
不意に、視界に入る大きな手のひら。
それを辿ると、ふざけた笑みを浮かべた黒尾さん。
「お姫様、お手をどうぞ。」
「…歩けなかったら掴まらせて貰いますね。」
支えになってくれるつもりのようだけど、今はいらない、とやんわり断った。
だって、京ちゃんがこっちをじっと見ているから、簡単にノったら後が怖い。
その視線から逃げたいのもあって、先を歩き始めた。
すぐに、2人も後ろからついてきて、私の両脇に並ぶ。
私を真ん中にして歩くのは、怪我を心配されているからだろうと、ちょっと嬉しくなった。
「…そういえば、私がお姫様だったら京ちゃんは騎士様ですね。」
道中、無言も嫌なので先程の黒尾さんの言葉を口にしてふざけてみる。
「従者のが合ってんじゃね?」
「従う者、なら騎士でも同じですよ。結局お姫様には逆らえない。」
二人がノってきた。
黒尾さんはともかく、京ちゃんまで話を合わせるとは意外だ。
「従者だと弱い立場のイメージじゃないですか?京ちゃん、私より下って感じじゃないです。私を守ってくれるし、たまに厳しいし。」
自分で言うとなんだか恥ずかしくなって下を向いた。