第1章 三角形 case1
袋を受け取って、中身を確認する黒尾さん。
「小熊ん家で洗ったのか?」
「はい。嫌でしたか?」
ジャージをわざわざクリーニングには出さない。
と言うか、そんなに時間が無かったから、出していられなかった。
当たり前のような事を聞かれているような気がしたけど、頷いて肯定する。
匂いを気にする人だったのか、と意外な気持ちになった。
「ふぅん。じゃ、小熊の香りを持って遠征行ってくるな。」
袋から私に移った視線がいやらしく笑んでいる。
台詞もなんか変態っぽい。
「さくらの家の柔軟剤、香水並みに匂いがきついので洗い直した方が無難ですよ。」
私がどう返そうか悩んでいると、京ちゃんが口を挟んできた。
いつも隣を歩いている身としては、そんな事を言われると気になってしまう。
自分の袖口を嗅ぐように鼻に手首の辺りを近付けた。