第1章 三角形 case1
電話で連絡を貰って数日の間、黒尾さんとは何度かやり取りをしていた。
メールの時もあれば電話が掛かってくる事もある。
ジャージ以外に用事があるのかと思えば話す内容は普通の雑談で。
何を考えているのか分からない人だな、と失礼ながら思ってしまう。
そんな毎日を送り、約束の日がやってきた。
部活が終わると京ちゃんとの相変わらずのやり取りをしながら、ゆっくり歩いて校門まで向かっていく。
「…あ。」
グラウンド真ん中ぐらいに差し掛かった時に校門の外側にいる、背の高いシルエットに気付いた。
遠目でも分かる特徴的な髪型をしている。
黒尾さんだ。
自然と京ちゃんと距離をとろうと歩調を緩める。
あの電話があった日以来、黒尾さんが絡むと機嫌が悪そうになる京ちゃん。
メールや電話の内容を話しても嫌な顔をされる。
冷やかされるのがそんなに嫌なのか、と少しだけ間を開けて歩いた。
「黒尾さん、こんにちは。わざわざ来て頂いてすみません。」
黒尾さんの傍に辿り着くと会釈をして、京ちゃんに預かって貰っていたジャージの入った袋を受け取って差し出す。
「洗濯してありますけど、匂いとか嫌だったら洗い直して下さいね。」
洗剤とか柔軟剤とか、違う香りが付くと嫌な人もいるだろうと思う。
黒尾さんは気にする人に見えないが、一応とばかりに言った。