第1章 三角形 case1
‐黒尾side‐
翌日、朝食をとっていると、メールが入った。
【付き合ってません】
俺がしたメールに合わせたのか一言だけの返信。
あれだけ煽って、2人にさせてやったってのに、赤葦は告白などしなかったようだ。
と、いう事は、だ。
幼馴染みを主張している今の内なら、小熊の恋心を俺に向ける事ぐらい出来るんじゃね?
イイヒトの思考なんざ吹っ飛んで、企みが漏れるように歪む口元。
取り合えず、ジャージをネタにして会う約束でも取り付けようか。
いや、それは次の合宿の時に、と言われてしまえば終わりだ。
登校中も、授業中も、そんな事ばかり考えていたが、チャンスは巡ってきた。
「黒尾、監督が呼んでる。」
放課後、練習をしていると夜久から声が掛かった。
言われた通り、監督の元に向かっていく。
「―…遠征、ですか?」
監督の話はゴールデンウィークの宮城へ遠征の事。
承諾書やら、何やら面倒な事を沢山話されたが、あまり頭には入って来ない。
急ぎなら、彼女に会う理由が出来る。
「監督、それは部活の行事ですから指定のジャージ、必要ですよね?」
なんて、わざとらしく当たり前の事を聞いた。
「俺、前回の合宿で梟谷にジャージを忘れたみたいで、連絡取るんで向こうの監督かコーチの連絡先教えて貰えません?」
ジャージを持つ本人の連絡先は知っている。
でも保険はかけておいた。
結局、小熊に直接の連絡が取れなかったから、保険を使って監督経由で自宅に電話をする事にはなったが。
彼女に会う話が纏まったから、結果オーライだ。