第1章 三角形 case1
‐黒尾side‐
2人にとって、これは自然な事なんだろう。
赤葦が足に触れても、嫌がりもしない。
跪いて彼女を見上げる様が、絵になってやがるのは腹立たしいが。
それくらい、2人はお似合いってやつだった。
惚れたと気付いた次の瞬間には、失恋が確定して。
それ以上、2人を見てらんなくなったから、監督に話しておく、とか。
尤もらしい理由を付けて、その場から離れた。
俺という、小熊にちょっかいを出す存在が表れて、赤葦が少しでも焦ったなら。
2人きりにしたら、コクるんじゃねぇかな。
大好きな京ちゃんと付き合うきっかけ、キューピッド。
そんなもんでも、せめて小熊の記憶に残れたら良いか。
柄にもなく、イイヒトな思考になっていた。
俺の匂いのするジャージを置いてきたのは、わざと。
そうやって、間接的なマーキングしてやって、赤葦がもっと焦ればいい。
普段は冷静で、表情筋の死んだ野郎が、分かりやすいくらい嫌そうな顔するのが想像出来て、少しだけ笑えた。