第1章 三角形 case1
‐黒尾side‐
マネージャーがいないのが常のウチが彼女に頼りきってはいけないと、周りにも話して、出来る限り遠ざけていた。
自分がやり始めたくせに、彼女が本当に逃げてしまうと、やり過ぎたかと心配になって。
何度も、はっきり言えばしつこいくらい、メールを送った。
本心の心配、わざとらしい煽り文句。
どちらにも返信がなく、電話をしても出なかった。
マネージャー自体を辞めてしまったら、俺の所為か。
それこそ赤葦に恨み殺されそうだ。
昼食前、ダメ元で電話を掛ける。
意外な事にすぐに通話の表示がされた。
聞こえた声は明らかに泣いていて、陰険なやり方をした自分に対する苛立ち半分に走り出した。
言われた通りの場所にいた彼女。
その瞳から流れた涙なのか、顔を洗った水なのか分からない雫が頬から顎に伝っていた。
一瞬で、目を奪われる。
今にも壊れそうな、儚げな顔が、とても美しいと思った。
恋とは、落ちるもの。
それを、知ってしまった瞬間だった。