第1章 三角形 case1
学校まで来て貰うのは流石に悪いから、せめて駅までは出ようかと申し出たけど。
それも、私の怪我を理由に却下されて。
黒尾さんが、かなり強引な人という事だけは分かる。
『じゃあ、また連絡するな。お休み。』
「お休みなさい。」
挨拶までを終えて、子機を下ろした。
隣には、何故か京ちゃんがまだいる。
高い位置からじっと私を見下ろして、何か言いたげだ。
「京ちゃん、どうしたの?」
「…別に。じゃあ、また明日迎えに来るよ。」
問い掛けても答えは聞けず、帰る姿を見送った。
「アンタ、すぐ人に懐くから心配なのよ。京治くん、さくらを本当に大切にしてるから、ね。女の子として。」
玄関で待っていた母が代わりに答えをくれた。
京ちゃんが私を大切にしてくれているのは知っている。
でも、言い方には何か引っ掛かりを感じた。
眉を寄せて家の中に入ると、引っ掛かりの理由を問おうと母の顔を見るけど。
「…あ、私はこれから仕事行くから。戸締まりキチンとね。」
こちらが何かを聞く前に母は用意をして出掛けていった。