第1章 三角形 case1
メールどころか、着信も入っていたようだ。
一回も気付かなくて申し訳ない。
親指で携帯を操作してメールを開く。
【ゴールデンウィーク、遠征あるからジャージ取りに行くわ。都合良い日教えて】
成程、急ぎの用事だったんだ。
週末にはゴールデンウィーク。
もう日がない。
「住所教えて下さい。宅急便で送ります。」
平日は学校で、放課後は部活。
同じ都内とはいえ、簡単に行き来出来る距離ではない。
確実に間に合う方法を取ろうと提案した。
『…うち、今度の祝日は他の部が試合やるって体育館使えないんだよな。』
「あぁ、昭和の日…ですか。」
飛び石で連休から外れているその日なら大丈夫か、と言う事だろう。
まだ帰らずに私の横に立っていた京ちゃんに顔を向けた。
「…部活は午前だけだよ。」
聞きたい事が分かったのか、すぐに返った答え。
「午後から届けに行きます。借りたの、私なので。」
『いやいや、良いって。俺が勝手に被せたんだし?こっち来るとか、京ちゃんに怒られるんじゃね?』
「怒られる理由がありません。」
なんだか、聞いた事のあるやり取り。
結局、私の方が折れてこちらに来て貰う事になるのは予想が出来る。
「分かりました。じゃあ、お願いします。」
押し問答をしていても仕方がない、と早めに決着を着けた。