第1章 三角形 case1
嫌な話が終わると家まではあっという間で。
家に帰り着くと玄関の前で鞄を受け取る。
「お休みなさい、京ちゃん。」
「お休み、さくら。」
いつもと変わらない挨拶をして、家に入ろうとした時だった。
私が開けようとする前に、目の前の扉が開く。
中から出てきたのは母で、片手に電話の子機を持っていた。
「あ、やっぱり帰ってきた。さくら、電話よ。ネコマ高校の、クロオさんって方。」
聞こえた名前に、差し出された子機を眺めて固まってしまった。
間を置いて、子機を手に取り耳に当てる。
「…はい。さくらです。」
『小熊?メールぐらい見とけよ。』
出た途端の言葉に首を傾げる。
朝、メールは返している筈だ。
それから別のメールがあったなら、休み時間とかに気付いている筈だ。
「いつ頃、メールしました?」
『部活終わってからだから、夕方だな。やっぱ見てねぇんだな?』
その時間のメールなら、こっちも部活だったし。
帰る時も、京ちゃんと一緒に歩いていたから携帯は確認していない。
「すみません。今、見ます。」
スカートのポケットにしまっていた携帯を取り出すと、ランプが光っていた。