第5章 ※三角形 case3※
落ち着こうと、頭から熱いシャワーを浴びる。
不意に目に入ったのは鏡で。
そこに映る自分の身体に、残されている無数の紅。
罪悪感が、頭を掠めた。
これを見ながら、秋紀は私を抱けるんだろうか。
萎えられたら、ショックだな。
少しでも綺麗に見せたくて、丁寧に身体を洗ったけど、そんなもので消える訳がなかった。
不安ばかりが膨らんで、中々出る事が出来ない。
だけど、いつまでもここに籠っている訳にもいかない。
深呼吸して、バスルームから出た。
見てしまうと気になるから、視線を逸らして身体を拭く。
タオルを巻いても、見るような位置にだって残っているから、なるべく下を見ないように寝室に入った。
…でも、そこに秋紀は居ない。
まだ、リビングの方に居るのかと思って行ってみたけど、やっぱり居ない。
玄関を見に行くと、靴がない。
撤回しないと、言ってしまったから、嫌悪感を私に向ける事が出来なくて。
こんな状況で逃げるなんて、最悪の手段を使ってまで、私に嫌われようとしてるのか。
また泣いてしまいそうになった時、玄関の扉が開いた。
「…お前な、そんな格好で立ってたら、この場で襲うぞ?」
入ってきた秋紀は、タオル一枚で立ち尽くしていた私を、いやらしい笑顔で眺めていた。