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【忍たま乱太郎】かぐや姫

第9章 其が願いしもの


厳しい表情だった椿は、ようやく笑って見せた。
だが神室にありがとうと言った彼女は、そのままそこで倒れこんだ。

「椿様!?」
「椿ちゃん!!」

神室が抱き止め、伊作がいち早く駆けつける。
椿の意識は朦朧としていた。

「背中の傷が酷いんだ!早く忍術学園へ!!」

伊作の様子に山田が指示を出す。

「わかった。伊作、乱太郎は彼女を連れて学園へ戻れ。必要な人材がいれば連れて行って構わん。」
「はい!…小平太、手伝ってくれ!」

伊作は小平太を指名した。学園まで彼女を背負っていける体力を見込んでのことだった。

「伊作!」

留三郎、仙蔵、長次が駆け寄る。

「椿を頼んだ。」
「小平太と乱太郎も。無事にたどり着けることを祈っている。」
「…こちらは任せておけ。」

「はい!伊作先輩!」
「うん、行こう。」

「どうか、よろしくお願い致します。」

神室が伊作に言う。
伊作は無言で頷いた。

三人は椿を連れて忍術学園を目指した。
山田と土井はそれを見送ると、神室に向き直る。

「神室殿、訳をお聞かせ頂けますかな?」
「…はい。」





乱太郎、小平太と共に森を駆け抜ける。

椿の容態を見て絶望感に襲われたのは、彼女が女の子で自分が少なからず好意を抱いていた証だろう。
戦場で幾度となく傷ついた兵士の手当てをしてきたが、こんなにも苦しい思いをしたことがない。
その小さな体で、どれ程の痛みに耐えたのだろうか。
想像を絶する。

この傷は痛みが消えるのに時間がかかるものだ。立っていることさえ、ままならないはず。
なのに、君がそこまで頑張るのには理由があったんだ。

「…さっきはびっくりしました。でも、椿さんって何者なんでしょうね?」

走りながら乱太郎が口にする。
小平太がそれに答えた。

「乱太郎、さっきの話を聞いていてわからなかったか?椿は……いや、この方は……」
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