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【忍たま乱太郎】かぐや姫

第9章 其が願いしもの


留三郎に背負われてきた椿ちゃんの姿を見たとき、心臓が止まるかと思った。
君のそんな姿は見たくなかった。
必死に訴える留三郎、尋常ではない様子のきり丸しんべぇ、そして青い顔をした椿ちゃん。

留三郎が羽織らせた上衣を解き、その背中を確認する。



誰か嘘だと言ってくれ。



彼女の背中は襦袢を着ているのにそこだけ破れ、鞭打ちにあったように無数の打たれた痕があった。
傷の上から傷を付けられ、見るに耐えない。
肉が裂け血が噴き出したように、真っ赤に染まっている。

目の当たりにした乱太郎は、ひどく狼狽している。
僕が…しっかりしなくては。

傷に当て布をし、襦袢の上から包帯で巻き付ける。
今ここでは応急処置しかできない。
こんなの、想定外だ。
早く、忍術学園へ戻らなくては!!


何かに気付いた椿ちゃんが起き上がろうとする。

「ダメだ!その傷で動いたら!」

僕は彼女を支えながら動かないように説得する。
だけど椿ちゃんは僕を見て、決意を込めた真剣な顔で言ったんだ。

「伊作、お願い。」




神室は椿の姿を探した。
早くこの目で無事を確認したかった。
椿が自分の前から姿を消したあの日、それでもずっと心は側に置いてあった。

「!」

見つけた。その姿、母親と見紛うほどだ。
体は辛いはずなのに、気丈にも立ち上がり神室を見ている。
神室はすぐ側まで寄ると、その場に崩れ落ちた。

「椿様!申し訳ありませんでした!全て私の責任でございます!」
「神室、あの城は…?」
「はっ!隆影様が桧山に造らせたものでございます。隆影様は忍術学園を手に入れようとのお考えでした。あの城に学園の者を誘い出し、そして兵士もろとも水に沈める計画だったのです。学園の戦力を削れば、手に入れるのは容易いと。」

恐ろしい計画に、聞いていた生徒と兵士がざわつく。
信じがたい話だが、確かにあの場にとどまればまず助からないであろう。
椿は無表情のまま、神室を見つめている。

「隆光様は、隆影様のお考えには反対されておられます。私は隆光様から、椿様を連れ帰るよう仰せつかっていました。椿様が巻き込まれる前に、安全なお手元に置きたかったとの思いからです。」
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