第7章 狙われたのは
「遅かったか…!」
「学園長!」
その場の全員の視線が学園長に集まる。土井は手の震えを押さえきれなかった。
いつになく難しい顔で、学園長はしばらく考え込んでいた。
「椿さんは私たちを庇ってくれたんです!」
「今度は僕たちが助けに行かなきゃ!」
「なに言われても俺たちは行きます!」
「お前たち…」
乱太郎たちは真剣な表情で学園長に詰め寄る。三人の様子に、学園長は何かを納得したように頷いた。
「椿君は大事な学園の一員じゃ。これより、椿君奪還作戦を開始する!」
異議を唱える者はいなかった。学園長を囲んで会議が行われる。
「学園長、私も同行致します。」
「利吉。」
「出城の場所は記憶しています。案内致しましょう。」
「では利吉君に先導をお願いしよう。他は、山田先生と土井先生が適任かの。」
教師陣からは山田、土井、それに利吉が救出組に選出された。
「ちょっと待て!何故俺が待機なんだ!?」
文次郎が不満を口にする。
今回の作戦ではまず、学園内を二つに分けることから始まった。敵地へ赴く救出組と、万が一に備え学園に残る待機組。六年生からは、文次郎のみが待機組に指名された。
「留三郎、替われ!俺が救出に向かう!」
「はぁ!?何言ってんだ!誰が替わるかよ!大人しく待ってろ!」
いつものように文次郎と留三郎が言い争う。だが、文次郎の気持ちはわからなくない。皆椿を助けに行きたいのは一緒だ。
だから本当はこんなことを言いたくないが今は時間が惜しいと、仙蔵が前にでる。
「文次郎よく聞け。我々六年の戦力を均等に分散したのがこの結果だ。学園はお前に任せた。後輩たちを頼む。」
「…っ!」
仙蔵の言葉に文次郎の手が止まる。文次郎もわかっている、こんなことをしても不毛だと。
五人に背を向けると、早く行けと口にした。伊作が仙蔵に、さすがと声をかける。
「必ず救出する。」
文次郎の震える背中に五人は誓った。