第8章 秋は夕暮れ②
「は、、、?」
沙織が目を丸くして顔を上げる。
その瞬間、大きな瞳から涙が溢れ落ちた。
なのに何で、
コイツにこんな顔させてンだよ、、、!
荒北は思わず握った拳を小さな溜息と共に緩めた。
そして目の前で固まる金髪頭をポンと優しく叩くと、スッと立ち上がり扉に向かった。
「え!?ちょっと、、、コラ!待てって!」
背中越しに沙織が追いかけてくるのが分かり、荒北はゆっくりと振り向いた。
「一体どこに、、、?」
不安げな表情で沙織が荒北を見つめる。
そんな沙織を荒北も見つめ返した。
そして、
「、、、バァーカチャン」
それだけ言って外に出た。
そしてすぐに沙織が出てこないように、背中で扉を押さえた。
すぐに扉の向こうでガチャガチャと音が鳴る。
「ハッ!」
その音を聞いた荒北は思わず笑った。
、、、ホントにテメェはバァーカだナ。
せっかく俺がカッコつけて出てきたってのに。
こーいう時は、大人しく待つもんじゃナイ?
荒北が押さえているのが分かったのか、すぐに扉の向こうは静かになった。
「荒北、、、?」
そしてこちらを伺うように沙織が荒北の名前を呼んだ。
その声は荒北の胸にスッと染み込んで、その奥深くを締め付けた。
「、、、大丈夫だ」
荒北は小さく深呼吸をした後、そう静かに呟き、走り出した。
大丈夫だ。
ちゃんと話つけてきてやるから。
大人しく待ってろ、ボケナスが。