第8章 秋は夕暮れ②
授業開始直前ということもあって寮の周りに生徒の姿はなかった。
荒北は拳に力を込めて女子寮の方向へ歩を進めた。
相変わらず胸の奥では変な音が鳴っていて、荒北の足を早める。
周りに気を配りながら、二階に上がった。
寮の廊下は静かだった。
20、、、5。
廊下をまっすぐ進んだ先、一番端の角部屋だった。
扉の前に立つと背中に変な汗が流れた。
来ちまった、、、。
だけど、、、。
もう逃げないと決めた。
コン、、、。
遠慮がちに小さくノックをした。
返事はない。
少しだけホッとした。
荒北はすぐに深呼吸をした。
よし。
そして
コンコン。
今度は二回、ノックをした。
また返事はなかった。
「、、、香田?いる?」
なぁ、頼むから普通に寝てたとか、そんなんでいてくれよ。
髪ぐしゃぐしゃで寝ぼけ眼で、起こすんじゃねーよ
なんて悪態をついて。
ガチャ、、、。
そしたら俺は心配して損したぜ
なんて言って、不貞腐れて帰るから。
「荒北?」
そんな声が聞こえて、静かに扉が開いた。
その先にチラリと見えた沙織は目を真っ赤に腫らしていて、荒北はただ溜息をついた。
「アンタ、どうしたの、、、?」
沙織は驚いた顔で呟いた。
「どうしたのじゃねェよ、バァーカ。」
テメェの方がどうしたヨ。
あぁ、どうしていつも
決意した途端こうなんだ。
なァ、神様。
「とりあえず入れてくんナイ?捕まりたくねェからヨ」
もしかして俺に一生言わせないつもりなんじゃナイ?