第8章 秋は夕暮れ②
「ハァ!?」
荒北の大きな声にクラスメイト達が一斉に注目する。
「おはよ、靖友!朝からそんなに驚いてどうしたんだ?」
依然、固まる荒北に新開が爽やかな笑顔で声をかけた。
「いや!アイツはァ!?」
「アイツ?あぁ、沙織ちゃん?今日は来てないけど、、、」
「いつもならこの時間にはいるじゃナァイ!」
「確かに、、、体調悪くて休みとかかな?あ、でも昨日バイト先で会った時は元気そうだったけど」
「アイツが休んだことってあったァ!?」
「そういえば俺は3年になってから休んだのは見たことないなぁ。はは、あんな見た目なのに彼女、実は真面目だよなぁ、、、って靖友?あれ、どこ行った?」
新開が言い終わる前に荒北は教室を飛び出した。
向かった先は、
「オイ!チビ眼鏡!!」
「ひゃっ!あ、はいっ!!えぇ!荒北くん!?」
佳奈の教室だった。
「アイツは?何か聞いてる!?」
「アイツって、、、沙織ちゃんのこと?えっと私は何も、、、」
「アイツの部屋の番号は!?」
「えと、205、、、って、えぇ!?」
聞くや否や荒北は教室を飛び出した。
「荒北くん!もうすぐ授業始まるよ!!、、、ってもういない、、、。」
胸騒ぎがした。
荒北は沙織と同じクラスになってから沙織が休んだのを見たことがない。
ガラは悪いクセに変な奴、、、。
自分のことは棚に上げて、そんなことを思ってよく笑った。
そんな所も好きだった。
そんな奴が休んだ。
親友にさえ何も言わずに。
「沙織のことをよろしくね」
ただの嫌味だと思っていた巧の言葉が引っかかる。
関係ないにしてもよっぽどのことだと思った。
沙織の元へ向かう。
それ以外の選択肢なんて考えられなかった。