第8章 秋は夕暮れ②
だけど、、、。
荒北は扉に手をかけながら、静かに目を閉じた。
俺はもう、、、逃げねェ。
アイツが誰のために綺麗なカッコしてたとか、
あの男の隣でどんなに嬉しそうな顔をしてたかとか、
その男がどんだけカッコイイ奴だったかとか、
俺は、、、友達宣言されちまったとか、
そんなのどーだっていい。
俺はアイツが俺のこと好きだって思ったから、
アイツのことを好きになったのか?
俺はアイツが綺麗だから好きになったのか?
アイツに男がいるって知った途端、好きじゃ、、、なくなるのか?
ちげェだろーが。
そんなの全部関係ねェ。
俺が好きになったのは
あの男に見せてるお綺麗な顔したアイツじゃねェ。
俺の隣でバカみたいにケラケラ笑う、乱暴で、偉そうで、女らしさなんて1つもねェ。
それなのに変なトコで繊細で、気ィ使って、思ってもみねェところで1人で勝手に落ち込んでる。
そんな、、、
荒北は少しだけ微笑んで、扉にかけた手に力を込めた。
ガラッ
大きな音を立てて扉が開く。
そんなお前なんだヨ、香田沙織。
ちゃんと伝えるから。
もう逃げたりしねェから。
だから俺の話を聞いてくれねェか、、、なァ?
荒北が顔を上げた先、教室の1番端っこの窓際の席。
そこには、、、
いつもいるはずの金髪頭が
いなかった。
「、、、え?」
荒北は扉の前で固まった。