第6章 秋は夕暮れ①
「アァン?何だコラ?」
反射的に睨み返した。
違う、、、そうじゃない。
そんなことが言いたかったわけじゃない。
今日初めて荒北と目が合った。
ほぼ真正面からその目をまっすぐ見る。
ずっと見たかった荒北の目。
近過ぎるくらいだった。
その目はやっぱり怒ってる、、、?
こんなの違うんだよ。
こんな風にアンタと向き合いたかったわけじゃない。
沙織は喉の奥が熱くなるのを感じた。
「それはこっちのセリフなんだヨ!テメェ、さっきから人のことジロジロと。ちょっと話あっから来いっつってんだヨ!」
荒北が沙織の腕を引っ張った。
掴まれた腕がキリキリと痛んだ。
ねぇ、何の話?
アキちゃんの話?
もう近づくなとかそんな話?
そんな話聞きたくないって思う私は
最低なのかな、、、。
「離せよっ!」
鼻の奥がツンとする。
荒北から目を背けて、その手を振り払った。
「誰がテメェなんかと話すかよ!」
違うんだ。
私はアンタと笑って
また話したかっただけなんだよ。
どうしよう、、、
何でこんなに
泣きそうなんだろう、、、
沙織は教室から飛び出した。