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隣の彼は目つきが悪い【弱虫ペダル】

第6章 秋は夕暮れ①


インターハイ、というものはやはり凄い。

授業の合間にある短い休憩が来るたびに沙織は思い知らされた。

総合2位だ。1位ではなく2位だ。
しかしそれでも全国で2位なのだ。

そしてそれを取ったインターハイ後初めての学校。校舎には《自転車競技部 祝 インターハイ総合2位》ののぼりが掲げてあった。

「ねぇ、新開くん!インターハイお疲れ様!すごかったねぇ!」
「3日も連続で走ったんでしょ!?どんなだった?」

まぁ、そうなるわなぁ、、、。

元々女子からの人気が高い新開の周りには、これまで以上に女子が集まっていた。
笑顔で丁寧に対応する新開を眺めて沙織は溜息をついた。


鬱陶しかったら鬱陶しいと言えばいいのに、、、
コイツみたいに。
そしてチラリと隣の女子の群れに目をやる。


「ねぇねぇ、荒北くん!インターハイ見たよ!」
「私も応援行ったんだよ!カッコよかったぁ!」

「ダァー!ウッセーなぁ!話しかけンな!」
明らかに迷惑そうな顔をして腕に絡みつく女子を振り払う荒北。
今までだったらこんな風に荒北が声を荒げると皆見ないフリをして避けていた。けれど

「そんな事言わないで、ね?もっと話聞かせてよ」
「私も聞きたいー」
女子達はまったくめげていない。

ププっ!、、、すっごいな、、、。
思わず笑いがこみ上げた。


「ウッゼっつてんだろ!近寄んナ、バァーカ!!」


んなこと言って、、、本当はチョット嬉しいんだろ?荒北。


なぁ、あの時のアンタはカッコよかったよ?
私も凄いと思ったんだ。
2位だったけど。
ベプシは一緒に飲めなかったけど。
アンタの走りを見て私は、


救われた気持ちになったんだよ?


、、、目も見てもらえない私より、
暴言吐かれてるアンタ達の方がマシかもな。


チラリと女子に囲まれる荒北を盗み見て、沙織は再び溜息をついた。やはり目は合わなかった。


もういっか。
このままフェードアウト決めようか、、、
昼休みのチャイムが鳴ってもこちらを見ない荒北に、そう思った矢先だった。


隣で大きな音が鳴ったと思ったら目の前に荒北が立っていた。
「オイ、、、香田」
初めて沙織の名前を呼ぶその声は
「ちょっとツラァ貸せヨ、、、!」
今まで聞いたことがないくらい低い声だった。
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