第3章 後編
「ユーリ、止めるんだ!もうこれ以上はっ…!」
ローは必死にユーリへと呼びかけた。
彼女の魔力が底をつきそうなのを、ローは感じていた。
魔力が尽きればユーリは死ぬ。
あれだけボロボロになった身体だ。
魔力があるから動けているようなもので、もういつ死んでもおかしくない。
だがユーリは、ローの言葉が聞こえていないのか更に魔力の強度を上げる。
まるで、死んでもいいと思っているかのように。
「…くそっ!!」
ローは魔物へと視線を向ける。
未だに壁にへばりついて耐えている魔物。
このまま持久戦に持ち込まれれば、ユーリが不利になるのは目に見えていた。
ーーーそ、そうだ!私、海を見てみたいんです!
ローの脳裏に過ったある言葉。
…本当は彼女を連れて行くつもりだった。
だけど、それが叶う前にローは契約を破棄してしまった。
ローはポケットに入っていたコインにそっと触れる。
…あぁ、何をやってるんだおれは
ユーリを救うために契約破棄したのに、今目の前で彼女は死にかけている。
こんな結末、おれは望んでいない。
ローは刀を手に取ると、心臓を王女に投げ返した。
「……えっ」
ユーリは己の魔力が限界に来ており焦っていたが、目の前の光景を見て驚愕の表情を浮かべた。
視界の端で、ずっと心配そうにこちらを見ていたロー。
そんな彼が刀を構えたかと思うと、魔物に目掛けて一気に飛び降りていった。