第3章 後編
ローの身体は巨大な穴に吸い込まれる。
そして刀を、魔物の脳天へと突き刺した。
ーーーがぁぁぁ!!
途端に響き渡る、唸り声。
「さっさとくたばれ!!」
ローは攻撃を止めないまま、魔物と共へ次第に落ちていく。
その光景をみたユーリは、咄嗟に魔力を解除した。
その瞬間、強力な重力が弱まる。
ーーーくたばるのは貴様の方だぁぁ!!
重力が弱まった一瞬の隙を狙って、魔物の手がローを貫いた。
「……かはっ…!」
ローは目を見開き、ゆっくりと深い底へと落ちていく。
魔物は再び壁に爪を立てようとした。
ーーーー…っ!
だが、魔物の動きは止まった。
魔物を貫いている刀。その刀にぶら下がるように、ローは何とかそこに留まっていた。
「…てめぇのせいであいつの望みを、叶えてやれなくなっただろうが!」
本当は、奴だけをこの穴に落とすつもりだった。
だけど…
ローは先ほど貫かれた身体を見た。
先ほどの衝撃で、左腕は吹っ飛んだ。
両足も、使い物にならないだろう。
もう、これ以上は無理だった。
「長い付き合いだ。…共に落ちろ」
ローは最後の力を振り絞ってROOMを発動させた。
そして片手で刀を薙ぎ払い、再度魔物の脳天を突き刺す。
響き渡る絶叫、そして叫び声。
上空へと視線を向ければ、ユーリが血相を変えてこちらへ向かってきていた。
ローは暴れる魔物を逃がすまいと、刀を持つ手に力を籠め、一気に奈落の底へと落ちていった。
…馬鹿だな、お前まで来たら意味がないだろう
ローは口元に笑みを浮かべると、そっと瞳を閉じた。