第3章 後編
ローは暫く唖然とした表情でユーリを見ていたが、すぐに異変に気付いた。
なんだあの目は、それに皮膚の変色…汚染か?なぜユーリが?
ローは嫌な汗が滴り落ちる感じがした。
あの汚染の仕方は、ローも知っていた。
なぜ彼女があの施設を知っていたのか分からない。だけど…
「ユーリっ!止めろ!!」
ローは血相を変えたように彼女へと駆け寄った。
あんな身体でこれ以上魔力を使うのは最早自殺行為だ。
「…地獄ニ、オチロ」
だが、それも間に合わなかった。
再び激しい衝撃波がローを襲う。
辺りの木々は全て吹き飛び、大地が割れる。
ーーーな、なんだこれは!?
魔物の下の地面に巨大な穴が開いた。
そして強力な重力でも発生しているのか、物凄い力でその穴に引っ張られた。
ユーリはその様子を静かに見守っていた。
「…ッチ」
全てが終った、そう思っていたのに。
魔物は巨大な穴の壁に爪を立てて、吸い込まれるのを何とか防いでいた。
その様子を見てユーリは思わず舌打ちをする。
「…サッサト、クタバレバイイモノヲ」
ユーリは更に魔力を発動させて威力を上げた。
途端に魔物が数メートルずり落ちる。
だが、まだ奴は生きていた。
ユーリの瞳から、赤い血が流れる。
腐敗された皮膚、精神、もし彼女の魔力が尽きたらどうなるのか。
ローは何度も彼女に近づこうとしたが、バリヤのようなもので弾かれる。
…まさか、おれを忘れたのか?
そんな筈はないと分かっていても、ユーリの変わりようにローは動揺していた。
そもそも彼女は、本当にユーリなのだろうか。
姿形は一緒でも、中身が余りに違い過ぎる。
ローは戸惑うように視線を向けると、不意にユーリと目が合った。
「…っ」
ユーリは笑っていた。
…昔と変わらない笑顔で。