第3章 後編
ローはゆっくりと視線を向けると、凄まじい衝撃波が襲ってきた。
恐ろしい程の魔力の風に、ローは思わずその場から離れる。
あの魔物さえ怯んでいる程の魔力。
何なんだ、これは。
「…もう、終わりにしよう」
強風が止むと、不意に頭上から声が降りてきた。
「…ユーリ?」
ローは目を見張った。
今目の前にいる彼女はローがよく知っている人物だ。
だが、彼女はこんな魔力など持っていなかった。
…一体何が
ローの頭は軽く混乱した。
だが、そんなローへとユーリは一瞬視線を向けただけで、すぐさま赤い魔法陣を描いた。
「…終わりなき戦いに、終焉を」
ユーリはそう呟くと、強烈な光が周囲を…いや世界を照らした。
太陽のようなその輝きは、目の前の闇の異形を焼き尽くす。
途端に響き渡る、不気味な唸り声。
ーーー人間ごときがぁ!!
そしてユーリの脳内に響いてくる声。
恐らく奴の叫びだろう。
虫けらとしか思ってなかった人間に殺されるのは屈辱なのだろうか。
いや、そもそも殺される気などないのか。
ユーリの放った強烈な光でも消滅しなかったこの魔物。
ユーリは口元に歪んだ笑みを浮かべた。
「…その、人間ゴトキニ、お前は…」
ユーリの脳内に響いてくる声、そして激しい頭痛。
身体が、人格が、精神が、破壊されていく。
ユーリの瞳は、もう真っ赤に染まっていた。