第3章 後編
周囲が光った瞬間見えた、大きな穴のような洞窟。
ユーリはそこへと進んでいった。
ユーリを取り囲んでいた魔物達は全て息絶えており、あれほど悪かった体調も不思議と回復していた。
ユーリは洞窟の中に入り暫く進むと、漸く水中から出られる場所を見つけた。
「…ッ…はぁ…」
ユーリは水中から出ると、軽く息を整える。
薄暗いこの部屋は、何処なんだ?
ユーリは光を灯し暫く散策していると、大きな装置を見つけた。
「……ッ!!」
カプセルのようなその装置を調べていると、ずっと逢いたいと思っていた人物を見つけた。
「…ロー!!」
ユーリは思わずカプセルに手を付きローを呼んだ。
ローは鎖に繋がれて、静かにそのカプセルの中で浮いていた。
閉じられた瞳が開くことはない。
…酷い
ローの姿を見たユーリの瞳は、怒りで更に赤く染まった。
ニンゲントハ、オロカナモノダナ
バリッ!
ユーリが触れていたカプセルのガラスに、ひびが入る。
ユーリは自分でも制御できない程の魔力に、人格を失いつつあった。
そしてその強すぎる魔力は、いとも簡単にカプセルを破壊した。
大量の水と共に倒れ込んでくるローを支えようと、ユーリは手をのばす。
だが、当然と言うか長身な彼を支え切れるはずもなく、結果押しつぶされる形で一緒に倒れ込んだ。
「…っ」
そして漸くユーリの意識がはっきり戻ると、なんとかローの下から這い出て、彼の状態を確認した。
「……駄目だ、生きているのか、死んでいるのか分からない」
ユーリはローにも魔力によるバリアを張ると、そっとその身体を抱きしめた。
冷たすぎるその身体からは心音は聞こえない。
それは、今ローの魂が抜けているためなのかは分からないが、ユーリの頬には涙が流れていった。
「……いや、諦めたらだめだ」
例え生きている可能性が1%でも、諦めたらだめなんだ。
ユーリは涙を拭うと、ローと一緒に地上へと向かった。
もうこの施設には用はない。
地上へ向けて一気にワープするのは、そう難しくなかった。