第9章 Sugar9
流司さんのバカ。嘘つき。
昨日の言葉は、忘れたの?
ほっぺを膨らませながら、楽しそうに話す男女を睨み付ける。
貴方の彼女はここにいるでしょ?
優衣さんとは、私の話ばっかりするって言ってたけど、絶対嘘でしょ。
私の話をあんな楽しそうにしてるの、見たことないもん。
あんなに笑顔見せて・・・私といる時、あんなに笑ってくれないくせに。
ずっと睨み付けていたら、優衣さんと目が合ってしまった。
別に優衣さんのことを睨んでいたわけじゃないんだけど・・・誤解されたら、やだな・・・。
優衣さんのこと、嫌いなわけじゃないから。
彼女は少し悲しそうな顔をして、流司さんに目線を戻した。
どうして、そんな顔をするの?
全然わからない。
笑顔だった顔が少し暗くなって、彼になにか言っている。
すると、こちらに手を振って、
「心羽ちゃーん!今、そっち行くね!」
と叫ぶ。
どうして来るの?
彼の腕を掴まないで・・・。
流司さんに、触れないで・・・。
どうか私をこれ以上、醜くさせないで。
こちらに来たがらない彼の腕を引っ張って、2人は近付いてくる。
「私、もう疲れた!ノロケばっかりで、うざい。流司が心羽ちゃんといちゃいちゃしたいみたいだから、相手してやって!」
「はっ!?ちげーし!なに言ってん・・・。」
「はいはい。心羽ちゃんに勘違いされちゃうよ?私、心羽ちゃんに嫌われたくない。」
もしかしたら、さっきの悲しそうな顔は、私に嫌われたと思ったのかな。
優衣さんのこと、好きだよ。
ただ、嫉妬してただけ。
「私、優衣さんのこと嫌いになったりしませんよ?ただ・・・。」
「ただ?」
「ただ・・・流司さん、私といる時あんなに笑んないのになぁって・・・。どうして、私に構ってくれないのかなって・・・私より、優衣さんが好きなのかなって・・・思って・・・。」
だんだん声が小さくなっていって、最後の方はもう、涙声になっている。
下を向きながら喋っていると、視界が歪んできて、涙が一粒一粒、床に落ちていく。
泣きたくないのに・・・流司さんは私を好きなのに・・・。
愛してるって、言ってくれたのに・・・。