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砂漠の月

第1章 砂漠の月00~70


市たちと一緒に居るのが楽しく、熱で一度も顔を見れないのかと思うと寂しくなってしたのだと言い、今は着物を縫っていたと市が人形を取り出した辺りの布団を捲ると三人が良く来ている着物と似た色の布地が断って置いてあった。

「器用だな」
「言わないでください……」
「上手、ね」
「……ありがとう、ございます」

恥ずかしくて、布団の中にもぞもぞと隠れようとする月子に感心した様に声を掛ける市と晴久が、それぞれ見終わった人形をサイドボードに置くとプリンの存在を思い出す。

「月子ちゃん、お手伝いさん、にプリン預かって来たの。食べる?」
「食べます!」
「元気だな、ほんと」
「失礼します。お茶をお持ちしました」

市が聞けば、月子が目を輝かせてコクコクと頷き、そんな月子の様子に市も晴久もクスクスと笑い出しているとノックの音がしてお手伝いさんと元就が入ってきた。
月子はお手伝いさんの顔を見て、漸く母親の存在を思い出すと慌てて市へと声を掛けた。

「あ、あのっ! 母がご迷惑をおかけしては……」
「大丈夫、よ」
「アレは黙らせてきた」
「お前が気にすることじゃねよ」

泣きそうな顔になって市に問う月子に、にこりと微笑んだ市が落ち着かせるように頭を撫で、元就がいつもの表情で何でもない事の様に言い、晴久が安心させるように小突いてくる。
月子は三人の顔とお手伝いさんの顔を見て、小さく頷くとホッとした様に身体から力を抜いた。
そこからは四人でのんびりとお茶をしながら話し、熱が下がったらしいとは言っても一応は、と早めに帰っていった。
玄関へ見送りに出た月子は、明日には学校に行けるからまた朝教室に行くと告げて笑顔で見送った。
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