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砂漠の月

第1章 砂漠の月00~70


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まさか、そんな。元就が?今までそんな素振りなんか…

「…市って鈍いのかな」

晴久と元就、月子ちゃんが帰るのを見送って。不安そうに俯く。

"我はもうずっと前から、市をその様に見ておる。考えてみるといい"

ずっとって?まさか前世からとか…ずっとずっと、市がその気になるまで黙っててくれたの?
気付かなくてごめんなさい。元就に無性に謝りたくて、でも謝ったら怒られそうで。

「市、ばかだ…」

赤くなる頬を両手で覆って、気付かなくてごめんなさい。そう零し俯いた。




ざわざわと生徒が集まる学校の廊下、テストの順位が発表されると晴久と元就に誘われた時に
少しだけ迷ったけどいつもの通りの笑顔を見せ、共に見に行った。

「おお、人が多いな」

晴久の呟きもごもっとも、皆遠巻きに掲示板に貼られた順位を見て固まってるけど

「どうやら我等婆娑羅者がランキングを占めている様よ」
「なる」

私どうしたんだろう、いつもなら、いつも通り会話に混ざれるのに。
心臓がドキドキして、まともに元就の顔が見れなくて…

「市先輩、晴久先輩、元就先輩」
「おう、月子」
「凄いですね、元就先輩が1位で市先輩が2位でした。晴久先輩も僅差で4位ですよ」
「あー、やっぱり元就と市に負けたか…市?どうした?」

月子ちゃんの頭をわしわしと撫でてる晴久が声を掛けてくれて
はっと我に返った。やば、ぼーっとしてた。

「大丈夫か市?風邪か?」
「ううん、大丈夫。ちょっとぼーっとしてた」

月子ちゃんにぎゅうっと抱き付かれ、可愛いなあと構ってたら
スルッと髪を、頭を撫でてくれたのは元就で。

無意識に俯いてしまう。な、なんでもない振りしなきゃ…

「市」
「あ、うん?なあに?」
「放課後屋上に来い、逃げるでないぞ」
「え」

月子ちゃんが私の脳内パニックに気付き、手を引いて教室まで引っ張ってくれたけど。

「"義兄上"」
「何ぞ、晴久」
「市に言ったろ」
「フン」

しょうがねえな、と晴久はばりばりと頭をかいて
応援してやるか、と苦笑いを浮かべる

「玉砕しちまえ」
「言っておれ、我は負け戦はせぬ」

元就のその自信、見習いたいものだ。
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